▲ Gate of Time(151803)_diameter 30cm_Acrylic on canvas_2018

芸術家は、その図形から理想的な美を見出し、天動説を主張した天文学者たちは、それを利用して宇宙論を確立した。しかし、複雑性を理解するには、それらの図形が 誤って抽象化されていたことが分かった。科学は、幾何学的に完璧な円ではなく、楕円の重要性を明らかにし、地球は宇宙の中心でもなければ、平らでもなかった。

しか し、ムン・スマン(문수만 작가)は、「地球は平面であるという考え」はそれなりに純粋であると評価している。ジェームズ・グリックは、新しい幾何学は、丸くなく凹凸のある、また滑らか ではなく粗い宇宙を反映しているという。それは、穴だらけで大きくへこみ、ちぎれ て絡み合っているものの幾何学だった。

ムン・スマンの「雲」の中にある幾何学は、このような理論が暗示する荒々しい幾何学に相当する。我々は、羊雲と入道雲を区別 するが、雲とは一瞬たりとも固定されない。躍動の時代に、雲や霧のイメージはしば しば登場する。すべての固定されたもの、停止したものを極度に拒否した哲学者ミ シェル・セールやジル・ドゥルーズを熱狂させたウィリアム・ターナーの絵がそれで ある。

▲ Simulacre(141804)_diameter 40cm_Acrylic on Canvas_2018

ムン・スマン 作家(서양화가 문수만,ARTIST MOON SOO MAN,文水萬 作家)の作品で、空が空間であるなら、そこに浮かぶ雲や鳥(または昆虫)は、空間というよりは時間である。時間とは、誕生と消滅に関係している。

哲学者ジル・ドゥルーズは、カオスから時間を見る。ドゥルーズは、『哲学とは何か』で、カオスを 無秩序、または無ではなく、かすかに浮かんでは四方に散らばってしまうすべての 形態の無限の速度と定義している。ドゥルーズによると、カオスは可能な限りすべて の微粒子を含め、一貫性や指示関係、そして結果もなく、現われてはすぐ消えてしまう。それは、可能な限りの形態を引き出す潜在態としての空白をいう。

ムン・スマンも、潜在的なものから現実的なものを引き出そうとしている。彼の丸い作品は、自然や芸術の秘密が収められた宝倉庫のダイヤルのように回り続けながら、開かれる瞬 間を待つ。その速度は、情報革命時代の技術革新よりは遅いが、止まることはない。ムン・スマンの作品は、物理的には固いが、それが内包しているものは流動的である。冷ややかな固体ではなく、熱い液体や気体のイメージである。

▲ Bluehole(201803)_diameter 25cm_Acrylic on Canvas_2018

線的な秩序は、エネルギーによって急激に変化する。エネルギーは、線的な秩序を混沌へと追いやる。空と雲は渦巻く。このような空間で、時間はどのように流れるか。科学哲学者ミシェル・セールは、『解明』で、自らの混沌の理論を、古典的な線的理論と区別している。時間が複雑で、予期せず複合的に流れることを強調するミシェル・セールは、天 気と時間は同じ単語「temps」に由来することを指摘する。

乱流のように流動的なム ン・スマンの大きな渦の中に、小さな渦を見せる。それは、フラクタルシリーズでも 同様である。フィリップ・ボールは、『物理学で見る社会-臨界質量からつながる事件(Critical Mass: How One Thing Leads to Another)』で、大規模に現れた構造が、より小さな 規模へと果てしなく繰り返される現象、すなわち、フラクタルが 1980年初頭に物理 学者の関心を集めたのは、そのようなパターンが自然の有機形態と似ているからだという。

葉は、木の枝を繰り返す。それは、枝が非常に高い効率で許容された空間を 満たしているためである。空間を満たす効率を数学的に表したのが、フラクタル次 元である。フィリップ・ボールによると、倍率が異なっても、形や模様が似ているとい う事実は、フラクタルの代表的な特徴である。

△文-李仙英(美術評論家)/글=이선영(미술평론가)