▲ 陶工の翼, Ø52.5㎝, Oil &Acrylic on Canvas, 2016

 

ムン・スマンの作品は、精巧ではあるが再現ではない。再現では、そのような多様性と遊戯は不可能である。拡大鏡で見ると、緻密に描かれた綿毛も奇異な感じを与えるが、多様さの印象を主導するのは、蝶の羽の部分である。彼は、特定の蝶をイメージとして固着させているわけではなく、蝶が発生し、変態する際に行われる過程を模倣している。筆はある波を生み、その後に細筆が加わり、蝶の模様として結晶化される。蝶という対象はもちろん、それが位置する背景を作る過程で偶 然的な要素が作用する。

 

▲ Finding Flow

 

彼の作品では、蝶は幻想に近い。幻想だからこそ、これほど鮮明になれる。蝶という指示対象は、幻想の世界に入るための端緒である。初期の作業で、収集箱を思わせる白いベースは、亀裂が入った陶磁器や腐食した青銅のような色と枠に変化している。微細な亀裂や腐食した金属のような表面演出は、人為的な背景も時間によって変化する自然のような姿を与える。変わらないのは、蝶の特性を最もよく表している形と、実物と見紛うほどの影の存在である。白い四角形の中に閉じ込められていた美しさと多様性の象徴は、無限を象徴する色と形の上に安着している。しかし、変わらずコレクションのように中心に存在している。実物を見ずに描けるほど没入していた素材である蝶は、自分の分 身であり、この分身は無限の中の有限を象徴するベースの中央に位置している。蝶の羽の模様も無限である。作家は、無限の中に無限を織り込む。規模が小さく ても、このような無限性が弱まることはない。

 

▲ 陶工の翼, Ø52.5㎝ Oil &Acrylic on Canvas, 2016

 

ムン・スマンの作品の特徴は、規模に 関係なく、強度と密度が維持されるという点である。この展示のすべての円形キャ ンバスは、以前の四角いキャンバスのようにイメージを盛り込む中性的なベースでは なく、それ自体が象徴的な効果を発揮している。彼の作品の中には、停止の中で 動きがあるように、沈黙の中に音が内在する。初期には、蝶が位置していた正方 形のキャンバスや、現在の丸いキャンバスは、音楽愛好家の彼は「遊びで」作って みたCDの形を模倣している可能性がある。ムン・スマンの作品で、円型のディスクとそのディスクが入っている正方形のフレーム は、無意味な時空間を質的に飛躍させる完璧な時空間の象徴である。

 

▲ Coherence, Ø210㎝ Oil & Acrylic on Canvas, 2016

 

円型や 正方形の上に刻まれたイメージは、音楽とシナジー効果を起こし、独特な共感覚 的体験を呼び起こす。丸い枠は、多彩な青磁色を抱く天空であり、精神、そして 自我という重層的象徴である。蝶が自分の分身であれば、自我の中のもう一つの 自我とも言える。それは、イデアのような完璧さを目指している。シヴォーン・ロバー ツは、ある幾何学者の生涯を書いた著書『無限 空間の王』で、万物を数と見なし たピタゴラスの後継者をプラトンと見ている。「神はいつも、幾何学の原理を適用す る」と言ったプラトンは、イデア的な幾何学形状として、円、球、正方形、立方体な どを挙げた。これらは現実には存在せず、物理的世界とは独立した、これらが属す より高い世界に存在していると信じられてきた。 △李仙英(美術評論家)

 

▲ ムン・スマン(文水萬, MOON SOO MAN)

 

◇ムン・スマン(文水萬)

△韓南大学 社会文化大学院 造形美術学科卒業. 日韓現代美術同行展 副會長.

△個展

2016 ムン・スマン展 (日本/神戸、GALLERY北野坂), 2016 ムン・スマン展 (大邱、スソンアートピア 湖畔ギャラリー), 2015 ムン・スマン展 (清州、現代デパート ギャラリーH) , 2014 ムン・スマン展 (大田、モリスギャラリー), 2011 The Butterfly - 蝶 (ソウル、カナアートスペース), 2010 The Butterfly (ソウル、ギャラリーイズ), 2009 蝶-Le Papillon (大田、モリスギャラリー), 2009 剥製された自由 (ソウル、カナ仁寺アートセンター), 2006 Iris Carnival (大田、タイムワールドギャラリー), 2005 ムン・スマン展 (大田、タイムワールドギャラリー).

△招待展/グループ展/アートフェア/ブース個展-(100回余)

2016 KÜNSTLERMESSE DRESDEN 2016(ドレスデン/ドイツ、ドレスデン博覧会場), 2015大田国際アートショー(大田、貿易展示館/モリスギャラリー),2015KIAF(ソウル、コエックスBホール166ブース/ギャラリー41), 2015日韓現代美術同行展(ソウル、ソウル市立慶熙宮美術館), 2014 AIAA日韓交流展 (日本、秋田美術館), 2014日韓現代美術同行展(日本/神戸、原田の森ギャラリー).

 

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